よくあるやつね、

うざくてすみません。

世界で1番のきみ

※これはすべて私の妄想です。

 

 

 

 

 

 

 


2020年6月、推しを降りました。

推しとは原作が好きだった友達に連れられて観に行った2.5次元舞台で出会いました。彼自身もまだ舞台2作品目で、まだまだ知名度の低い俳優でした。私は決して演技も歌も特別に上手いとは言えない彼が、必死に舞台の上で足掻き、もがき、成長していく姿に心惹かれました。彼が同じ公演の中でも毎日新しいものを吸収し、毎公演違うアプローチでお芝居をしていく姿を見て、「私はこの人をずっと見ていたい」と思いました。

今まで声優を推したことはあっても舞台俳優を推したことはなくて、わからないことだらけでした。まず私には、名義を積むという概念がありませんでした。それから私は様々な失敗を繰り返し、降りる前最後に彼が出ていた作品には自分が満足するくらいには通うことができました。

彼を降りようと思ったきっかけは些細なことの積み重ねでした。1番最初は推しはじめて半年後くらいに彼が出ていたラジオでの発言です。彼はバンドのベーシストだった父親の影響から、アーティストになりたいと志して芸能界に入りました。彼が2.5次元舞台に出たのはまったくの偶然で、彼が所属していた劇団の公演をプロデュースしていたお偉いさんの目に止まったことがきっかけでした。彼はイベントの宣伝のために出演したラジオではっきりと「今は俳優として活動していますが、将来はアーティストになりたいと思っています」と発言しました。アーティスト志望であったことは知っていましたが、それほどまでに強く願っていたことは知らず衝撃を受けたことを覚えています。その後も彼はことあるごとにアーティスト志望をアピールし、気まぐれで自作の弾き語りの曲をTwitterにアップしていました。しかし、肝心のお仕事は2.5次元舞台、朗読劇、イベント……。オリジナルの曲がいくつかあるなら早くCDを出せば良いものをCDのしの字も聞かない。私には、彼がやりたいと言っていることと、実際やっていることの差が激しいように感じました。すぐに路線変更は難しくても、CDを出す動きをしてみる等のアーティストに向けたお仕事を1つでもすることは難しかったのでしょうか。そして、そんな疑問を抱きつつ、その疑問を忘れることもありつつ、彼のバースデーイベントに参加しました。イベント内の質問コーナーでファンからの「将来はアーティストと俳優どちらで活動していきたいのか」という質問がありました。その答えとして彼は「アーティストとして活動していきたいけど、ファンのみなさまが望むのであれば俳優の活動も続けたい」と言いました。記憶が多少曖昧ですが、俳優としての活動のモチベーションは自分の中にはなく、あくまでファンが望むからであるような言い方をしていたことを覚えています。私はこれを聞き唖然としました。この世の中には俳優になりたくて俳優になり俳優1本で活動する俳優や、俳優になりたくてもチャンスが回ってこなくてまだ卵である俳優がたくさんいます。その中で彼は人気舞台でハマり役をつかみ、一躍人気俳優に名乗りをあげることができているのです。そんなシンデレラストーリーを歩んだ彼の演劇へのモチベーションは「ファンが望むから」。そんなふざけた話があるかと思いました。抱きはじめた不信感を拭うように、彼は座長を務める舞台を大成功へと導きます。その直後からコロナ禍による舞台公演中止が相次ぎ、私は推しの現場はもちろん現場すべてがなくなり、ゆっくりと様々なことを見直す時間になりました。彼はドラマ出演はしていたものの、現場の予定ははるか先。コロナの影響で今後の生活が不安に感じている中彼は、彼を見つけ出したお偉いさんのクラウドファンディングの応援の配信に呼ばれました。そこで彼が見せたのは、企画を考えてこない、お芝居へのモチベーションは未だファンの望みのみ、アーティストになりたい、というなにも成長していない彼の姿でした。アーティストになりたいと口先だけで言い、実際行動にはなにも移していない、ずっと私が感じてた不信感を増長させるだけの彼でした。私は彼が1ステージ1ステージ成長し、舞台の上で輝くのが見たかったから応援しようと決めたはずです。しかし、私には今の彼はアーティストも俳優もなあなあで中途半端、捨てる勇気も進む勇気もない成長をやめた人間に見えました。しかも、彼にはリセット癖があるらしく、せっかくTwitterでアップした曲は3ヶ月と経たずに削除され、せっかくはじめたYouTubeチャンネルも更新されては1週間以内に削除されを繰り返していました。アーティストとしてアピールしていくために曲をアップしているのに、その可能性を自ら絶ってしまっていたのです。これじゃCDも出せないよなと、悲しい納得をしてしまいました。「オタクが推しと方向性で意見が合わなくなったら降りたほうがいい」という意見を耳にしたことがありました。そのときに私は「ああ、今が降り時なんだな」と悟りました。彼の行動に不信しか感じなくなり、楽しみにしていたはずのドラマは平気で見逃すようになり、配信の途中で寝落ちしたこともありました。私は彼を嫌いになる前に彼を応援することをやめ、好きなところだけかいつまんで味わうことにしました。

コロナ禍でちょうど推しを降りようと思っていたときに出会ったあるアーティストがいました。そのアーティストは中学生のときに初めて2.5次元舞台に出演し、一度音楽に専念するために芸能界を辞め、アーティストとしてまた芸能界で返り咲き、今はアーティストといくつかの舞台に立つ俳優として活動しています。彼は推しとは違いアーティストがメインであるため、CDやアルバムをたくさんリリースしています。彼の曲が映画の主題歌やアニメの主題歌に選ばれることも少なくありません。その一方で彼は推しが出演した人気舞台とも引けを取らない人気2.5次元舞台に出演し、その圧倒的な歌声を舞台の上でも披露しています。推しと彼が違うところは「音楽に専念するためにあった立場を捨てられたこと」と「音楽活動をしていく中で改めてお芝居の魅力に気づき、お芝居のモチベーションを自分で作り上げたこと」だと思います。そして彼はTwitterのbio欄に自分のことを「アーティスト、俳優です」と紹介文を載せています。彼は明日は違いアーティストと俳優の両立ができているのです。もちろん、彼の方法が正しいか正しくないかは私にはわかりません。しかし、私は推しに彼と会ってほしいのです。会ってどのような紆余曲折を経て今ここに立っているのか、自分に足りないものはなにかを実感してほしいのです。私は自分の好きなキャラクターを舞台でこのアーティストが演じてくださっています。こんなに素敵な考えを持つ人に自分の大好きなキャラクターを預けることができるのはすごく贅沢だと思います。本当にありがとうございます。

私は今でも推しが大好きです。人見知りだけどものすごくお茶目なところも、周りをよく見ていて空気が読めるところも、自分の夢を抑えてまでファンの期待に応えようとしてくれる優しさも、くしゃって笑う笑顔も、自分にないものを理解してそれを埋めようと努力する謙虚さも、常に感謝の気持ちを忘れないところも、本人は気にしてるかもしれないけどちょっと大きい前歯も、本気で意味不明なイラストも、お見送りのとき私が去る最後の最後まで目を合わせて「ありがとう」って言ってくれるところも、毎公演毎公演新しいものを吸収して成長していく姿も、自分を高められると思った瞬間に溢れ出てくる笑顔も、こんなちんちくりんの私にファンサをくれたりあんまり好みではなかったかもしれないプレのトレーナーを着てくれるところも、歌を歌っているときの本当に楽しそうな表情も、思ったことを包み隠さず言ってくれる素直さも、全部全部全部大好きです。彼を一言で表すなら「真面目」です。頭からつま先まで真面目で、すごく優しい人です。応援はもうできないけど、これからも世界で1番大好きだし、彼以上に好きで本気になれる人現れないと思います。それくらい大好きです。降りたからといって嫌いになったわけではなく、嫌いになる前に降りて幸せな好きを噛みしめようと思っただけのことです。他人からは「逃げ」と言われるかもしれないけれど、大好きで大好きで仕方ない彼を嫌いになるくらいなら他人から指をさされて生きる方がましです。

私の願いはただ一つ、俳優としてでもアーティストとしてでもどちらでもいいからあなたがステージの上でキラキラ輝く姿をずっと見せてね!!